最近、DHレースはもちろん、パークや下手すりゃトレイルでも、これを付けているバイクをよく見かけるようになりました。

O-chain アクティブスパイダー。要は、チェーンリングの固定に遊びを持たせて、ちょっと動くことで、ダウンヒル時にチェーンが突っ張って、クランクが逆方向へ引っ張られる現象を軽減しようというパーツです。
それに似ている機構をもたせたのが……

DTのDEG。フリーのラチェットそのものに遊びを持たせて、チェーンの突っ張りを吸収してやろうというもの。同じようなコンセプトのものとして、E ThirteenのSidekickシステムがありますね。あと、Chris Kingも、DEGのような調整機能を取り入れています。
で、改めてちゃんと、このペダルキックバックってなによ?という話な訳なんですが‥‥というわけで、おなじみのAIさんにイラストにしてもらいました!

最近、AIにMTBのことばかり聞くもんだから、だいぶAIもレスポンスが速いです(汗)
要は、リアサスペンションが縮んだ際に、ホイールベースが少し伸びるため(正確には、チェーンリングの上面から、カセットまでの距離が伸びる)、チェーンが後ろに引っ張られて、その結果クランクも逆回転方向に引っ張られる現象のこと。
これは、クランクを逆方向に引っ張るだけではなく、リアサスペンションの動きの抵抗にもつながるので、チェーンリングやフリーボディに、逆方向へ動く遊びを持たせて、キックバックを相殺しようというものになります。
でも、これ、よーく考えてみると、なんだか物理学的におかしいのよ!
だって、リアサスが縮んで、チェーンリングからカセットまでの上側のチェーンの長さが伸びて、フリーがエンゲージしているのなら、チェーンが突っ張ってキックバックが発生します。でも、実際にはタイヤが回っているわけだから、フリーも一緒に前に回って、チェーンは下側から送り込まれて、上側のチェーンの長さ分くらいは調整しそうなものでしょ?(そのために、ディレイラーにテンショナープーリーケージがある)
じゃあ、どーして、ペダルキックバックが発生するのじゃああああ!!! と、不思議に思う人は世界中にいるようで、これをガチンコで検証したチームがドイツにおりまして(大汗)、今回、その研究内容が、PINKBIKE誌にて紹介されました。英語がOKなら、ちょっと長いですがリンクを張っておくので、読んでみてくださいな。
また、この後のイラストや写真は、下記リンクのPINKBIKE誌の記事より引用させていただきます。
ちなみに、研究チームは、2016年モデルのキャニオンのDHバイク(結構古いな・汗)に、センサーをつけまくって、いろいろテストを行ったそうで……

③④⑤は、クランク角とトルクをチェックするセンサー、⑥⑦は、フロントサスペンションのストロークセンサー、⑧⑨は、スプロケットの回転速度を検出するセンサー、⑬は、クランクの動きを撮影するカメラと、ガチのラボ仕様バイク(滝汗)。で、このチームが導き出したキックバックの現実は、キックバック対策パーツを販売している一部のメーカーを震え上がらせるような内容でして……

1・典型的なペダルキックバックのメカニズム
まず、これは典型的なペダルキックバックのイラスト。サスペンションが縮むと(①)、チェーンの上側がちょっと伸びます(伸びた分がΔc)。その結果、クランクが逆方向へ引っ張られる(③)というメカニズム。ただ、45分間、ハードなトラックを結構なスピードで走っても、問題になるようなペダルキックバックが確認できなかったという、衝撃の結果に……サスペンションが縮んでも、すぐにフリーがエンゲージして、チェーンが下側から上側に送り込まれるため、キックバックが確認できない!
ところが、時速11kmというスロースピードで、80㎝のドロップを飛び降りた際に、ついにキックバックをとらえたんですね。この際に、クランクを通して最大90Nmというトルクがライダーの足の裏に伝わることが確認できたんです。
どういうことかというと、遅い速度で、サスペンションがフルストロークすると、サスペンションの動きによるチェーンの伸びる速度が(Δcの距離が伸びる速度・つまり、チェーンが突っ張る度合い)、ホイールの回転スピード(=フリーがエンゲージして回転する速度)についていけないため、ペダルキックバックが発生するということ。

2・リアホイールをロックさせたときに感じる、キックバックのような現象
次にペダルキックバックのようなトルクが、クランクで確認されたのが、ハードブレーキングで、リアホイールがロックした時。
ただ、これはキックバックではなくて、単に、リアホイールがロックしたことで、クランクが固定されてしまい、慣性でクランクがペダルを通してライダーの足を押し上げていただけ(これが観測されたトルク)というもの。なので、この現象は、フルサスだけではなく、ハードテールでも確認できるのです。
荒れたトレイルをブレーキングしながら下ってくる時、ライダーがバイクから放り出されるようなフィーリングになることがあると思うんですが、その原因はこれと言っても過言じゃなさそうですね。

3・サスペンションが縮む際に、スプロケットが回りすぎておきる、キックバック的現象
次のケースは、ちょっと理解が難しいんですが、ペダルを止めて下っている時は、当然フリーが空走状態で、タイヤは回っているが、スプロケットは止っています。で、サスペンションが勢いよく縮み始めると、カセットスプロケットの回転慣性によって、スプロケットが直前の角度を保とうとする力が働いて、チェーンに一瞬張力が生じるというもの。圧縮側の慣性負荷というヤツなんですが、まぁ、物理学的なことは理解できなくてもいいや(汗)
ただ、重要なのは、この圧縮慣性負荷によるチェーンの突っ張りは、ハブ側の吸収装置では対応ができないということ。要は、フリーのノッチとは関係のない物理現象なので、この現象を吸収するには、クランク側で吸収しなけけりゃならない。でも、この現象で発生するトルクは知れているので、鈍感なライダーなら、???で終わってしまう可能性が大なのです。

4・ディレイラーのテンショナーが悪さをする現象
今度は、圧縮時の慣性負荷とは逆の話。
サスペンションが縮んで、フリーがエンゲージしてカセットスプロケットがタイヤの回転と同じ方向に回ると、その慣性でスプロケットが回りすぎて、チェーンがイラストのようにたるみます。そうなると、ディレイラーのテンショナーが、そのたるみを後ろへ引っ張るので、引っ張り切った瞬間に(チェーンのたるみが無くなった瞬間に)、クランクを逆回転させようとする力が働くというもの。
これも、3番目のケースと同じで、フリーボディの機構とは関係のない次元での減少のため、この現象を軽減させるには、クランク側で対応しなければならないのです。ただ、このチェーンが張る瞬間のトルク発生時間は、0.01秒くらいなので、まず気づかないでしょうねぇ(大汗)
ペダルキックバックって、実際のところはどうなの??

この研究の結論は、「トレイル上で、ペダルキックバックが問題になることはめったにない」というもの。そりゃそうです、トレイルで時速11kmで80㎝のドロップを飛び降りることはまずないですもんね(汗)
ただ、非常に重要で興味深いのが、「ペダルキックバックと思い込んでしまうクランクの逆回転現象の原因は、カセットスプロケットとチェーンの慣性によるものと、ハードブレーキングによるリアホイールのロックが主体」というところ。
特に、「カセットスプロケットがリバウンド回転(逆回転)することによるチェーンの瞬間的な伸びが、もっとも一般的な原因」と結論づけています。もうこうなると、ハイピボットバイクでも起きちゃう(大汗)さらに研究チームは過激な締めくくりをしていて、「リバウンド回転による一連の減少は、ハブベースのアンチ・キックバック機能では予防できない」「高い予防の可能性があるものは、クランクベースのデバイスか、チェーンの動きを制御するシステム」と言ってます(あえて、デバイスのブランド名は伏せておきます……震)
しかし、だからと言って、この研究結果がすべてかというとそうじゃないわけで。
ハブベースのデバイスも、ライダーによっては効果を体感できると言っている人もいるわけで(それもエリートライダーが)、大事なのは、乗っているライダーのフィーリングがいいのか悪いのか?ということですよね。
ただ、当店的な(おいら的な)考えを最後に付け加えさせてもらうと、「ディレイラーで90%は解決する」というもの。

当店でお気に入りのMadroneのディレイラーでも、シマノのDi2や新型XT&Deoreを使うとわかるんですが、激しいところを下っていても、ペダルに、コンコンと来る衝撃が本当に少なくなるんですよ。これは、テンショナーがチェーンの張力を保つレスポンスが優れているから。
結局のところ、ペダルキックバックとされる現象の原因の多くが、チェーンの長さの変化による、テンションの乱れなので、ここを改善すれば、感じるキックバックも減るんです。

それでもまだ気になるのなら、STFUの装着は非常に有効だとおいらも思います。ただ、商品にはなんの罪はないのだけど、おいらはどうもこの見た目が………(苦笑)
ただ、ペダルキックバックが気になるのは、コンマ数秒を気にするDHレースであったり、エンデューロレースであったり、競技での話。競技なら、速くなるのなら、可能性のあることはガンガンやるべきですよね。
でも、レースはしない、スピードもアホほど出さないのであれば、おいら的には、キックバック対策にお金を突っ込むよりも、そのお金で、もっといろんなトレイルやパークへ遠征するほうが、結果的に幸せのような気がします(笑)

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