最近、MTBのカタログスペックを見ていると、レバレッジとか、アンチスクワットとか、なんか聞きなれない言葉とそれに伴う数字がいろいろ出てくるんです。

REVEL BIKESのインスタグラムに掲載されていたこの画像。新型RANGERのスペック紹介なのですが、Leverage Ratio つまり、レバレッジ比が、12.7%とあります。なんじゃこりゃ?
このレバレッジ比(以下LR比)を理解するには、まず、Leverage レバレッジがなんなのかを説明しなきゃならんのですが(汗)

VorsprungのWEBにわかりやすいイラストがあったので拝借。
リアサスが25㎜縮むと、サスペンションが10㎜縮む時、LR比は、25÷10=2.5 となります。
通常、LR比は3.0~2.0の間に設定されることが多いのですが、この数字が持つ意味が非常に深い(大汗)ざっくりシンプルにまとめると、こんな意味になります。
大き目のLR比(3.0前後)
高めのスプリングレートが必要(高めのエア圧)
短いショックで対応ができる
小さめのLR比(2.3前後)
低めのスプリングレートでOK(低圧運用が可能)
ストローク長が長めで容量が大きいショックが推奨
そして、LR比がサスペンションストロークに応じて変化するレバレッジカーブは、そのバイクの乗り味を推察するのに、絶対に必要なデータとなります。

これは、YETIの、SB120、SB135 、SB140、SB160、SB165のレバレッジカーブ比較表。
なかなかメーカーでこういうデータを公開しているところはないのですが、YETIはこのグラフをWEBで公開しています。YETIえらい!!
で、このグラフにある%表記されている数字がとても重要で、これはストローク中の初期LR比がどのくらいボトムにかけて変化したのかを表す数値で、Progressive Rate (以下PR値)と言います。
ちょっとヤヤコシイのが、メーカーによっては、このPR値をLR比として表記しているところもあるんですが(汗)、数値が%表記であるなら、意味は同じになります。
このPR値が大きくなるということは、そのサスペンションの特性が、ボトムストロークへ行けば行くほど、LR比が小さくなり、より粘り強くなる(=縮みにくくなる)ということです。

SB120の場合、PR値は11%。これは、XCバイクなみに低く、レバレッジカーブはかなりストレートに近くなります。

グラフにするとほぼ一直線。このように、レバレッジカーブが直線に近く、さらにPR値が10%以下くらいの状態をリニア特性と言います。
リニア特性は、初期ストロークもボトムストロークもほぼ同じ動きなので、とても乗り心地はいいけれど、イニシャルのバネレートのままボトムにも負荷がかかるため、ボトムアウトしやすくなる傾向があります。そのため、伸びていても縮んでいてもスプリングレートが変わらないコイルショックにはあまり向いていないとされているんですね。
SB120のイニシャルの2.84というLR比は、最近のトレンドからするとけっこう高い部類。そして、ボトムでも2.52と、ちょっと高めのLR比なので、SB120は細かいバンプを気持ちよく吸収してくれる乗り味……と推測できます(実際にそうなんです)。で、このバイクで気持ちよくシングルトラックをかっ飛ぶのに具合がいいリアショックは、ボトム側でプログレッシブレートが高くなるエアサス一択となります。
なんで、コイルスプリングじゃダメ?というのはですね、コイルスプリングは、伸びている状態でも縮んでいる状態でも、スプリングレートが一定なので、このようなリニア特性のショートストロークバイクに取り付けると、簡単にボトムアウトしちゃうんです。

それでもコイルショックを使いたい場合は、油圧ボトムダンパーが装着されているショックを使えばOK。
PUSH Industries のリアショックなどは、サスペンションが底打ちする前に、中に組み込まれた油圧ダンパーがぐっと粘ってくれるので、リニア特性の強いトレイルバイクなどと相性がいいんです。
このリニア特性の反対側にいるバイクがこんなやつで……

パークでよく見かける、Santa CruzのMegatower。これは2020年モデルと、ちょっと前のヤツで、リアストロークは160㎜。でも、これのレバレッジカーブも比較的まっすぐなんですが、角度が凄い(汗)

このMegatowerは、チェーンステー長を10㎜アジャストできるモデルで、さらにフリップチップで、ノーマルポジションとローポジションと選択ができました。そのため、レバレッジカーブも4種類もあるんですが(汗)、見ての通り、スタートが3.0以上で、そこからまっすぐ、2.35付近まで落ちてきます。
LR比3.0以上となると、ものすごく乗り心地がいいはず。まさにアメ車という感じの浮遊しているような乗り心地で、縮めば縮むほど、だんだん一定の率で粘りが出てきます。そのため、ストロークの大小にかかわらず、乗り味に変化がないと推察できます。
そして、PR値はざっくりですが30%。一般的に、PR値が25%を超えてくるバイクを、プログレッシブ特性が高いバイクと呼ぶようで、DHバイクなどは、このPR値が35%くらいになるものもあります。ということは、このMegatowerは、DHバイクにかなり近い乗り味ということですね。
で、このバイクに具合がいいリアサスは、入りからボトムまで同じように動いてくれるサスペンションがベスト。コイルショックや、エア容量が大きなエアショックが適していると言えます。
でも、同じ160㎜ストロークでもちょっと中途半端なPR値のヤツもいてですね……(大汗)

YETIのフラッグシップであるSB160を見てみると、SB160のPR値は17%。前述のMegatowerと比較しても一目瞭然ですが、ストローク160㎜のエンデューロバイクにしては、このPR値はかなり低い部類。

SB160のレバレッジカーブは、初期こそはかなりリニアですが、ストロークの半分を超えたところくらいから、だんだんLR比が小さくなります。これが、ボトムに向かって、だんだんサスペンションの粘りが増していくという意味。最後の20㎜くらいのストロークでは、LR比の下降率が急激に高くなり、大きな衝撃にボトムでしっかり耐える特性がグラフ化されています。
そもそものスタートが2.63くらいなので、SB160の乗り味は、ちょっと固く感じるかもしれないけれど、地面をしっかりつかんでいるような乗り心地と推測できます(本当にそんな感じ)。そんなダイレクト感のある乗り心地が全ストロークの3分の2くらいまで続いて、最後の10㎜ストロークでLR比がガツンと下がります。これは、ここでギュッと粘るという意味。つまり、SB160は全体的にカッチリした乗り味で、最後はギュッと踏ん張る特性……まさに、レーシングエンデューロバイクということですね。
最近は、サスペンションデザインの技術力が上がってきて、同時にリアショックの高性能化が進んできたので、このような、リニア特性とプログレッシブ特性を併せ持つサスペンションが多く出現しているんです。

そんなSB160に具合がいいショックは、まず、容量は大き目のショックがいい。加えて、エアショックを使うのであれば、エアトークンは少な目にして、イニシャルの動きは良くしてやるのがベター。サスペンションがすでに、ボトムで粘る特性なので、ショックのボトム特性を考える必要がそこまで重要じゃないんです。
コイルスプリングは相性がいいでしょうね。サスペンションがボトムでちゃんと粘りますから、コイルショックの良さが十分に出てきます。YETIのワークスチームが、SB160にリアコイルを多用しているのは、そんな理由からだと思います。
ただ、この手のバイクの性能を決定するのが、エア圧、もしくはコイルスプリングレート。正直言うと、SB160のセッティングは、なかなか難しいんですよ(苦笑)。でも、すべてがキッチリはまった時はものすごく乗りやすい……でも、なかなかそのセッティングを出すのが面倒くさいので、おいらは、電子制御ショックに走りました(大笑)
そして、ここからがさらに面白いですよ(笑)
同じようなレバレッジカーブで、同じようなPR値の2台のバイクがあったとしたら、おそらく乗り味は同じになるように思うじゃないですか。ところが、そうは問屋が卸さない。

両方ともYETIですが、左はSB135。前後27.5インチ、もしくはMIXホイール仕様の、リアストローク135㎜。右はSB140。前後29インチ、リアストローク140㎜です。
ストロークの差はたった5㎜で、違いはフレームがコンパクトかそうじゃないかくらい(ちなみに写真は、両方ともMサイズ)。ですが、レバレッジカーブを見ると、これが本当に興味深くて……

カーブの形状はほぼ同じ、PR値はまったく一緒。でも、違うのはLR比ですね。
SB140は、スタートが2.7付近。ちょうど、SB160とSB120の間で、乗り心地としっかり感のバランスを取ったLR比と言えます。14%というPR値は決してプログレッシブ特性が高いとは言い切れないんですが、サスストロークの4分の3がリニアな特性で、最後に少し踏ん張ってくれるという絶妙なサスペンションデザインのおかげで、ショックのセッティングをしっかり出しておけば、ビッグジャンプも全然こなせるというわけです。
対するSB135は、まず、スタートが2.57くらいと、もうこの時点ですでに、気持ちプログレッシブ。言い換えれば、サスの反力がしっかりある、ダイレクトな乗り味ということです。その乗り味が、サスストロークの4分の3くらい、ずっとリニアに続いて、最後にギュギュっと踏ん張ってくれる味付け。ボトムのLR比は、2.2に近く、レーシングエンデューロバイクのSB160に近いLR比です。
つまり、普通に走るだけじゃなくて、飛んだり跳ねたりひねったりというトリッキーな動きがしやすく(ダイレクトな乗り味なので)、ダートジャンプのように飛んでも、着地でしっかり踏ん張ってくれるという、プレイバイクな特性が、そのままレバレッジカーブに現れているというわけです。
さて、ここまで読んでいただいたうえで、一番最初のこいつのLR比、PR値、レバレッジカーブを見直してみましょうか。

新型RangerのPR値は12.7%。で、気になるレバレッジカーブは……

RANGER V3というほうが新型ね。
スタートのLR比は、YETI SB120よりも高い2.9。ボトムは2.52くらいと、SB120より、きもーちプログレッシブ特性が高い感じ。ただ、レバレッジカーブを見ると、最初の20㎜ストロークでの変化率が高く、そこから変化率がだんだん緩くなってくる独特な形状です。
でも、最初の20㎜ストロークは、ほぼサグなので、実際に見るべきは、20~120㎜ストローク間のレバレッジカーブ。ちょっとお椀型にカーブはしていますが、まあ、直線に近いといえば近い。ボトムでのLR比は2.52付近と、ここはYETI SB120とまったく同じ。つまり、ボトムの粘りはYETIと一緒だけど、初期ストロークの乗り心地はこっちの方が上??ということは、トレイルだけじゃなくて、グラベルを走るのも得意そうですね。
長々と書いてきましたが、サスペンションを語るには、今回のレバレッジ関連とは別に、アンチスクワット、アンチライズという数字が重要になります。
ペダリング効率を比較するのに、重要な数字なんですが、まぁ、これも説明するのがちょー大変(汗)なので、第2弾で、徹底的に解説したいと思います。


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