イタリアで行われているエンデューロワールドカップで、YETIの新型フルサスバイクがお披露目されましたね。

シートステーにLTとプリントされているので、こりゃ、もう市販されるのは間違いないでしょう。
eMTBのLTeからモーターを取っ払ったエンデューロバイク、おそらくサスペンションストロークもLTeと同じ、リア160㎜、フロント170㎜でしょうね。

これは、SB160の本国での在庫状況。完成車も含めて、すべてのサイズ、カラー、売り切れになっていることから、このLTがSB160にとってかわるのは間違いないようです。
となると、いままでYETIのトレードマークだった、Switch Infinity サスペンションが、Sixfinity サスペンションシステムにとってかわるのかもしれません。

そもそも、この Switch Infinity サスペンションってなんなのよ?とよく聞かれるのですが(汗)
このシステムのリアのスイングアームはワンピースで、パッと見ると、シングルピボットのシンプルなサスペンションに見えます。が、このメインピボットにスライドシリンダーを組み合わせたスライドピボットでもって、サスペンションがストロークする際に、メインピボットが上下に動くんです。

貴重な写真なんですが、左側は、2011年に最初に作られた、Switch Infinity のプロトタイプ。
初期ストロークでは、このスライドピボットが上に動き、ペダリング時の上下運動(ボビング)を相殺するようにサスペンションが動くんです。
そして中間からボトムストロークにかけては、このスライドピボットが上から下へ移動して、スイングアームが自由に動くようになり(=衝撃に対してのレスポンスが速い)、さらにボトムではプログレッシブレートが上がるため、ボトムアウトしにくい特性になります。
結果、やたらと登りでトラクションがかかって、ガンガン登れるのに、下りはものすごく懐が深いストロークになるというわけです。
あと、このスライドピボットはユニット化されているため、システムとしてはほぼシングルピボットサスペンションと同じというシンプルなもの。ベアリングの数も少なく、定期的にスライドピボットにグリスガンでグリスを入れるだけで、安定した動きが持続できる優れたシステムです。

ところが、そんなにいい Switch Infinity ですが、思いもよらない形で機構を全面見直しをしなけりゃならない羽目に……eMTBの登場ですね。
ボトムブラケット部分にモーターを搭載するため、スライドピボットを取り付けることが出来なくなってしまったのです。で、YETIのエンジニアは、なんとか違う形で、Switch Infinity の動きを再現しようと知恵を絞って、行きついたのが Sixfinity システム。これは、いわゆる4バー式サスペンションにタイミングリンクと呼ばれるリンクを追加したもの。6バーシステムとも言われます。

Sixfinityの最大の特徴は、プログレッシブレート(PR値)を可変できるということ。やり方は非常にシンプルで、リアショックの固定位置を、アジャストチップでずらすことで、レバレッジ比が変わり、PR値も変わるという訳。
eMTBは、機材の性格上、いろんなスキルの人がいろんな乗り方をします。乗り心地最優先で、下りは超安全な人もいれば、とにかく速く登って、ギュンギュン下りたい人もいるわけで。1台のバイクで全部のニーズを満たせるように、この調整幅は本当に大きく取られています。
事実、現行のeMTBの、ロングストロークモデルのLTe(リアストローク160㎜)は、3段階調整。ですが、ミドルストロークモデルのMTeは(リアストローク140㎜)、4段階に調整が可能になっています。
そして、eMTBにこの Sixfinity を採用したところで、YETIはこのシステムが、実は下りに特化したセッティングにもすごく有効だということに気づいちゃったわけで……

まだ市販化されていない、DHプロジェクトバイク。これに Sixfinity が採用されました。この写真だと、タイミングリンクが見えないんですが……

DHフレームですから、ドロッパーポストのことを考えなくていいので、ロワリンクとタイミングリンクは、シートチューブを貫通しています。この写真は2023年のプロトタイプですが、そこから熟成を重ねて、今やワールドカップのDHで、ジュニア部門の常勝バイクにまでなりました。
この Sixfinity の大きなメリットは、リアサスがストロークした際の、ホイールベースの変化量が極めて少ないんです。元々、Switch Infinity システムは、かなりホイールベースの変化量が少なく、ペダルキックバックが少ないと言われているんですが、Sixfinity システムはさらに変化量が少ない。なので、DHバイクに採用されるのはある意味当然の結果だったのではないかと思います。

実際に Sixfinity サスペンションのLTeで走ると、明らかに Switch Infinity よりも中間ストロークからボトムにかけてのサスのレスポンスが高いことが感じられます。写真のようなジャンプとかではあまり差は出ないんですが、根っこだらけの下りなどではその差は歴然。ストレートに言えば、速く走れる。
そのため、レース機材としてのモデルが、この Sixfinity に移行していくのは当然の流れでしょうね。

Switch Infinity が登場したのが、2014年モデルのSB5から。12年も前のメカニズムが、基本構造を変えずにずっと続いていること自体すごいこと。でも、もう12年前の構造であることを考えると、次のスタイルに移行していくのは当然の流れなのかもしれません。
でも、スイングアームがワンピースで剛性が高く、構造がシンプルでメンテナンスが簡単、使っているベアリングも少ないのでオーバーホールも簡単だという点は、唯一無二のサスペンションシステムだと思うんですよ。
あと、同じストロークの Switch Infinity バイク(SB160)と、Sixfinity バイク(LTe)を乗り比べると、コーナーでの加重移動で、リアを流しやすいのは、Switch Infinity の方なんですよね。気のせいかと思って、ストローク140㎜の、SB140とMTeで比較しても、やっぱり Switch Infinity の方が、テールをブリブリさせて走りやすい(笑)わかりやすく言えば、Switch Infinity の方が、ちょっとやんちゃな感じで、乗っている感がとても楽しい。このやんちゃ感が、YETIのアイデンティティみたいなもん。だからこそ、Sixfinity は、ちょっと気取った優等生に感じちゃうのです(大笑)。

あと、完全に個人的主観ですが、横置きのサスペンションが格好いいのよ!(大笑)
そして、Sixfinity が出たからといっても、まだ、Switch Infinity は現役でして……

LTがお披露目になった、イタリアのワールドカップですが、YETIワークスのエースライダー、Richie Rudeは、SB160を使っていました。まぁ、彼が当店と同じ意識を持っている訳はありませんが(爆)、まだまだレースでも使える先端機材なのは変わりありません。

そんなわけで、商売抜きで本気で大声で叫びたいのですが、自分はMTBフリークだという自覚をお持ちであれば、Switch Infinity システムのバイクが手に入るうちに乗らないのは損!!!なのですっ


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