前回、リアサスペンションのレバレッジ比について解説したんですが、リアサスの特性を語るのにさらに重要な要素があと2つあります。それが、アンチスクワット比(Anti-squat rate 以下AS)と、アンチライズ比(Anti-rise rate 以下AR)というもの。
まず、アンチスクワット(AS)から説明をするのが入りやすいのですが、これは、ペダリングをしている際のボビングに対しての抵抗力を表しています。ボビングというのは、ペダリングの際に、リアサスがヘコヘコ動いてしまうことですね。

理想のリアサスの動きというのは、ペダリング時に地面をしっかりつかむように、リアサスがちょっと伸びるように動いてくれること。このペダリング時のリアサスの動きがAS値で、ペダリング時に伸び縮みしないポイントを100%とします。そのため、ペダリング効率がいいASは、100%より上となります。
さらに、このAS値は、ペダリングによる入力トルクによって変化します。言い換えると、ローギアの時とハイギアの時で、AS値は変わるんです。ハイギアの際には、加速性能をよくしたいわけですから、AS値は高い方がいいんですが、ローギアの際には、できるだけ100%に近い方がいい。というのは、AS値が高くなるほど、リアサスが伸びた方向に突っ張ってしまうので、路面への追従性が悪くなってしまうんです。荒れた路面をしっかりとグリップして登るには、AS値は100%に近い方がいいんですね。

このASグラフは、YETIの最新エンデューロモデルである、LTのもの。ここで重要視するのが、Pedaling Zoneと書かれている部分。トップギアに入っている時のAS値は191%とかなり高い。XCバイクのトップギアで、AS値は140~160%くらいですから、191%は高すぎるくらい。でもこれは、エンデューロレースにおいてトップギアを使うのは、下りでの瞬間的な加速の際に必要なわけですから、実は高いほうがいい。で、下りでストロークが残り4分の1くらいところになると、AS値が100%を切るので、路面追従性が高くなるというわけ。
ローギアにおいてのAS値は118%と、これはかなり理想的な数値で、XCバイクとたいして変わりないレベルです。

こちらのASグラフもYETIのものなんですが、これは、eMTBのLTe。見ての通り、トップギアのときと、ローギアの時のAS値の差があまりないんですね。
LTeは、Eエンデューロレーシングバイクなので、登りのSSのことを考えなけりゃならない。障害物だらけの登りセクションを駆け上がるには、ペダリング効率も当然ながら、路面の追従性も考えないと、モーターのトルクでリアホイールがスピンしまくってしまって、結局ロスになっちゃう。そのため、トップギアでも比較的AS値を100%近くに抑えるようにしているというわけです。

これは、XCモデルの、YETI ASRのASグラフ。ASRはサスペンションのレバレッジ特性がリニアなので、トップギアとローギアのAS値が途中で重なることはありません。面白いのは、トップギアの際のAS値は、サスペンションがストロークしているときも100%以上。これは、トップギアは下り&平地のみでしか使わないので、路面追従性よりもペダリングのレスポンス最優先ということですね。
そして次の指標となるのが、アンチライズ(AR)。これは、ブレーキングをしている際に、リアサスがどう動くのか?という数値で、100%が、ブレーキング時にリアサスは伸びもしなければ縮みもしないポイント。100%を超えると、ブレーキング時にリアサスが縮んでテールが下がるります。逆に100%を下回ると、ブレーキング時にリアサスが伸び上がろうとします。
最近のトレンドとしては、エンデューロバイクやDHバイクのように、ストロークが長いバイクのAR値は70~80%くらいが、ブレーキング時にもしっかりリアサスが動いてくれて、衝撃を吸収してくれながらも、姿勢変化が少なくていいと考えられているようです。ただ、このAR値は、サスペンションストローク量に応じて変化するので、できるだけARグラフがフラットになるように(つまり、ストローク全域において、ブレーキング時のバイクの姿勢変化が一定)、各メーカーはサスペンションデザインに腐心しているんです。

こちらが、YETI LT のARグラフ。破線で示しているのが、AR値の理想値なんですが、それにちかいリニアな曲線になっています。つまり、ストロークの初動でもボトムでも、ブレーキング時のリアサスの動きの変化に、あまり違いがないということを示しています。

こちらは、XCモデルのASRのARグラフ。先のLTに比較すると、もう違いは一目瞭然。ボトムストローク時でも80%以上。でも、だからと言って、路面の追従性を重要視しているわけではないんです。そもそもXCバイクやダウンカントリーバイクのリアストロークは、長くて120㎜程度。そのため、ブレーキング時の路面追従性を高めていっても、数字的には80~90%になってきます(逆に、超ロングストロークのDHバイクなどだと、60~70%台になることもある)。
で、このAS値とAR値を知っておくとなにがいいかというと、そのバイクに乗らなくても、バイクの特性がなんとなく見えてくるんですね。

いま、おいらが楽しくてたまらないと思っている、Revel Ranger ですが、メーカーが旧タイプのRangerとの比較グラフを公開しています。

AS値を見ると、サスペンションストロークの4分の3の領域で100%を超えていることから、ペダリング効率はかなり高いことがわかります。旧型に比較すると、相当ペダルボビングは解消されています。
AR値は、サスペンションストローク全域で80%以上、ペダリング領域では90%前後と、XCバイクなみの数値になっています。ショートストロークでもブレーキング時にちゃんとリアが路面追従しつつ、過度に動かないのでバイクの姿勢が崩れない特性と読めます。つまり、Rangerはダウンカントリーバイクの領域を超えて、ハードXCバイクとしても全然使えるということです。
このAS値やAR値は、各メーカーが必ず公開している訳ではないのですが、メジャーブランドバイクの場合、メディアなどが解析して公開していることも多いので、気になるバイクがあったら、徹底的に検索しまくるのが吉。
最近は、AI先生がものすごい勢いで調べてくれるので、ぜひ活用してみてください(間違えることもあるけどね・笑)

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