MTBのホイール、スポークの数は32本というのが、半ばスタンダードになっています。が、昔は36本がアタリマエで、32本というのはロードバイクのスポーク数でした。それが、年月とともに、リムの剛性が上がってきて、スポークは少なくてもホイール強度が保てるようになったため、MTBは32Hがスタンダード、ロードに関しては、24本か28本がスタンダードになってきました。
スポーク数が多ければ、当然ホイール剛性は高くなるのですが、それ以上に重要なのが、スポーク&ニップルに加わる負担が分散されるので、スポーク破断のリスクが下がります。ただ、このスポーク&ニップルに加わる負担が、アルミリムとカーボンリムで変わってきます。

Nox Composites がわかりやすいイラストを掲載しているので引用すると、アルミリムの場合、負荷がリムに加わると(赤い矢印)、リムそのものがしなって衝撃を吸収しようとします。そのため、スポークには縮む方向への衝撃が加わるので、スポーク&ニップルは緩むようなストレスにさらされます。

ところが、カーボンリムの場合は、素材がとにかく硬いので、衝撃が加わってもリムがアルミリムの様に変形しません。その結果、衝撃が加わったポイントの反対側へストレスが伝わり、ストレスポイントの反対側のスポークが引っ張られるのです。

その結果、カーボンリムに激しい衝撃が加わると、どんどんニップルとスポークにストレスが溜まっていき、最終的に写真のように破断してしまうことが多々あります。その為、ダウンヒルやエンデューロのように激しく走る時は、カーボンリムの場合はスポーク数は多く、加えてスポークは太い方が、ホイールの耐久性を高めることになります。
そして、スポーク数よりも重要なのが、スポークの通し方でして……

これは32Hのホイール。赤い〇で囲っているところが、1本のスポークが、他のスポークと重なっているポイント。3か所重なっているので、この組み方を、3クロスと呼びます。

クロス数の違いをイラストにしたのがこれ。全然クロスしない組み方は、ラジアル組みといいます。で、クロス数が少なくなると、スポークが短くなって、ホイールの衝撃がダイレクトに伝わるので乗り心地が硬くなるとよく言われるのですが、これはちょっと解釈としては正しくない(汗)
クロス数が少なくなると確かにスポークは短くなるのですが、リムに衝撃が加わっても、スポークは縮まないのです。なぜなら、スポークはニップルを使って、内側へ張力を働かせているので、リムに衝撃が加わって、ホイールの中心方向へ変形しても、ニップルがリムから浮くだけで、縮む方向へのストレスは加わらないのです。

ところが、カーボンリムの場合は、リムの変形量が恐ろしく少ないため、ホイールの中心方向へ加重がかかる衝撃が加わると、ストレスポイントの反対側のスポークが、外側へ引っ張られるストレスにさらされます。この時、スポークが短いと、スポークの伸びしろ(スポークは衝撃で伸びるんです)が少ないため、ニップルに加わるストレスが、長いスポークよりも高くなるんです。そのため、カーボンリムホイールを同じ条件で比較した場合は、クロス数が少ないホイールの方が、ニップルが飛びやすくなります。

そうなると、カーボンリムの場合、アルミニップルよりもブラスニップルの方がいいのでは??と思うかもしれませんが、これも実は違う。忘れちゃいけないのは、カーボンは一種の樹脂なので、金属が食い込んだら割れます(汗)。スポークが引っ張られるということは、ニップルがカーボンリムに食い込む方向にストレスが加わるということなので、限界が来たらニップルが飛んでくれた方が、カーボンリムが割れないで済むのです。
でも、簡単にニップルが飛んでも困るので(汗)、リムの強度とニップルの強度のバランスは非常に重要になるというわけですね。こればっかりは、いろんなニップルとリムを組み合わせて、テストするしかない。幸い、当店はオリジナルのカーボンリムをやっているため、この辺りの経験値は膨大にあります(自画自賛)。
さらに、クロス数によって、ホイールのキャラクター(剛性特性)が大きく変わってきます。

ホイールの特性を決定する剛性は、この3種類。緑が、横剛性(ラテラル剛性)、青が、縦剛性(ラジアル剛性)、赤が、接線剛性(ねじれ剛性)。
この剛性をMTB的な走りに例えて言うと、横剛性は、コーナーリング時のホイールの変形特性。縦剛性は、ジャンプの着地やドロップオフにおけるホイールの変形特性。ねじれ剛性は、ペダリング時のホイールの変形特性で、ねじれ剛性が高いと、それだけロスが少なく、ペダリングパワーがタイヤに伝わるということになります。
このホイール剛性を語るに、どうしても外せない人が、アメリカはデューク大学の、ガービン博士という、構造力学のスペシャリスト。この人、自転車のスポークについて、とんでもなく詳しいリサーチをしたある一種のマニア(大汗)でして、この人の論文、Bicycle Wheel Spoke Patterns and Spoke Fatigue(スポークの組み方とスポークの金属疲労)は、自転車ホイールを組む人は読んだ方がいいとおいらは真剣に思っております(汗)
ちなみに、このグラフの中の2Xは、2クロス。4Xは4クロスなんですが、4クロスはMTBではまず使われないですね。パワーのある競輪選手が、36Hで4クロスで組むことがたまにあるくらいです。

まず、横剛性ですが、スポークが太くなると、当然、横剛性は高くなります。2.0は14番プレーン、1.8は15番プレーン。単純に比較して、加重が加わると、10~14%くらい、14番プレーンは15番プレーンより、横剛性が高くなります。そして、面白いのが、クロス数が少なくなると、横剛性が、5~8%アップするということ。つまり、同じ条件(同じリム)であれば、スポークが太くて、クロス数が少ない方が、横剛性が高くなります。

次に、縦剛性ですが、これも横剛性と同じで、スポークが太くなって、クロス数が少ない方が、縦剛性が高くなる。でも、その差は横剛性ほどの明確な差ではなくて、ほんのちょっと。そりゃ、スポークが短い方が突っ張りますから、縦方向には強くなりますよね。

最後にねじれ剛性ですが、これは実に面白い(ガリレオ風・汗)。
スポークが太くなればねじれ剛性が高くなるのは当たり前ですが、2クロスが、3クロスになるだけで、ねじれ剛性は60%から75%もアップします。この結果、ペダリングロスが少ないホイールを組むことが可能になります。

こうやって、科学的な根拠でひとつづつ解析していくと、ライダーとバイク、乗るフィールドや乗り方に応じて、一番使いやすく、無駄のないホイール組みを割り出すことが可能なんですね。
通常、ハブを前後セットで買うと、前後ともにスポーク穴の数は同じなので、前後でスポーク数を変えるのはちょっと一般的ではありませんが、クロス数を変えたり、スポークの細さを変えたりすることで、乗りやすさと耐久性、軽さのバランスを高めることが可能です。
ただ、Eバイクの場合は別で、とにかく丈夫なリムで、太いスポークで、32H、3クロスで組んでおけ!!が鉄則です(大笑)


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