クランクの長さ、昔は、身長の10分の1くらいがちょうどいいなんていう乱暴な説(身長185㎝だったら、185㎜クランクかよ!)が言われていたころがあるんですよ(笑)。その後、MTB=175㎜時代が長く続き(初代MuddyFoxは、180㎜を使っていたころもあった)、その後、170㎜が主流に。そして、最近のショートクランクブームが後押ししたのか、完成車でも165㎜クランクを採用するブランドが増えてきました。
そもそも、なんでショートクランクが急に流行りはじめたのかというと……この人がその一因と言われています。

写真はウィキペディアより。ロードで無双状態な、タディ・ポガチャル。
この人がどんんだけすごいのかは別に書かなくてもいいですが(笑)、この人、身長176㎝なんですが、使っているクランクが160~165㎜。ショートクランクを使い始めたころ、プロロードの世界では172.5㎜が主流でしたから、かなり短い。で、彼が勝ちまくったおかげで、ロード界で、ショートクランクが一種のブームとなった……と言われています。

Trainer Road Forumにある図解なんですが、とても分かりやすいのでご紹介。赤い線が、長いクランクを回している時の足の角度と上体の角度。水色が短いクランクですね。
クランクが短くなると、まず、膝の屈曲角度が浅くなり(膝が伸びているということ)、腰の角度が緩くなります。このため、股関節にかかる負担を大きく減らせるので、ストレスを増やさずに、ケイデンスを大幅に上げられます。さらに、上体をもっと前傾させることができるので、空気抵抗の軽減も期待できる……というわけ。

そのため、トライアスロンではけっこう前から、ショートクランクを使うのが主流でした。なので、別に目新しいことではなかったんですね。
じゃあ、MTBではどうなのよ……という話になるわけですが……

ロードやトライアスロンと違って、凸凹を乗り越えるMTBなので、クランクが短くなると、ペダルを障害物にブチ当てるリスクが大きく減ります。オールドスクールなおいらは、一貫して175㎜クランクを使っていたのですが、足を大怪我してから、少しでも負担を減らそうと162.5㎜クランクにしたところ、本当に根っこや岩にペダルをひっかけなくなって感激しましたよ。
ただですね、一定のケイデンスを維持しやすいロードと違って、MTBはペダルの回転数を維持するのが難しい。障害物を乗り越える時には一瞬ペダルが止まり、そこから踏み込んでバイクを前に出すわけですから、ケイデンスによる出力よりも、瞬間的なトルクも必要になるわけです。

以前に、Eバイクの記事で使ったこのAIイラストですが、ショートクランクを使うと高回転を維持しやすくなるので、トルクを出せる脚があれば、高出力を維持しやすくなります。つまり、ショートクランクを使って速くなったポガチャルは、脚から発生するトルクが半端ないということ!超人的なトルクを出力にするために、ショートクランクが有効だったというわけです。

ROTORのクランク長は、こんなにバリエーションがあります。ちょっとした物理学の方程式で計算すると、クランクの長さが5㎜変わると、同じ力でペダルを踏み込んでも、発生するトルクが3%くらい変わります。ということは、175㎜のクランクを長い事使っていたおいらは、162.5㎜クランクにしたことで、単純計算ですが、8%弱くらいトルクを損失していたことになるんです。
出力は、トルク X 回転数ですから、トルクを8%損失したなら、回転数を8%アップさせなきゃならない。でも、シングルトラックの登り坂で、すでにローギアを使い切っている時に、回転数を8%アップできるのなら、ロードレースに転向していますがな!!(爆)

トルク問題は、Eバイクでも考えられていまして、こちらのレースモデルは、実は一般的なEバイクよりもクランクが長いんです。このLTeは、通常グレードは160㎜クランク。ペダルヒットを避けるために、クランクを短くするのがEバイクの常識なのですが、レースモデルのT4は、165㎜クランクなんですね。登りのSSがあるEエンデューロにおいて、爆発的なパワーをモーターから引き出すには、ペダル入力トルクも大きくしないとダメなので、クランクをちょっと長くしているというわけです。

じゃあ、MTB乗りは、このクランク問題、どう対処すりゃいいのさ??という話になるわけですが……ここ10年で、MTBのギア比は低くなり(フロント30Tで、リアが50T以上なんてアタリマエ)、フルサスの性能が劇的にアップしてトラクションが良くなったので、入力トルクがちょっと減ったとしても、やはりショートクランクのメリットはあります。ただ、やたら短くすればいいというもんじゃない(笑)。
で、いろいろ調べ上げた結果、フランスのナショナルチームのDr. Haushalter(なんて読むんだろ?汗)が、とても論理的なことを論文に書いていまして……「ペダリング時に股関節がもっとも屈曲した際、大腿骨が地面に対して、12~15°前下がりになるクランク長が、関節へのストレスとペダリングの出力のバランスが最大限になる」というもの。さらにこの博士、大腿骨の長さから、この理想角度に近くなるクランク長の統計もとっているんです。ただし、この統計のクランケが、みんなロードの強豪なので(汗)、そのクランク長がそのままおいらのようなへっぽこライダーに通用するワケがない。
というわけで、その後、いわゆるサンデーライダーのペダリング出力なども調べ倒し(やはり調べている人がいるんですよ)、おいらの経験値も加えつつ(一応、大昔はロードの選手で、XCライダーでもあったんですよ、うーんと痩せていたころに)、当店では以下のやりかたで、クランク長をおおざっぱに決めています。

おいらの場合、身長173㎝なので、この公式で計算すると、大腿骨の長さ(推定)は、46.8㎝。で、その推定大腿骨長から、次の表を使って、大体のクランク長を見出します。

ちなみに、競技レベルの脚力があるライダーは、この表のクランク長から5㎜マイナスだと、高回転域出力型になります。おいらの場合は、46.8㎝で競技レベルではないので(笑)、165㎜から170㎜の間となりますね。で、回転数よりもトルクで登るタイプなので、170㎜が適正と思われる……という感じになります。
で、この表を見てみるとわかるんですが、160㎜クランクが、一番使える幅が広い。身長換算すると、150㎝強から、165㎝くらいまでのライダーをカバーしていることになります。その理由がなかなか面白くて、この身長帯の人が乗るバイクはSサイズになるんですが、サドルの位置がハンドルバーよりも低くなるかならないかのポジションなんですね。こうなると、前傾姿勢がとりにくくなり、トルクでペダルを踏めなくなるので、必然的にクランクは短い方が調子がいいということなんですよ。

いろいろとグダグダ書きましたが、クランクの長さは本当に奥が深くて、事実正解がない(苦笑)。写真のように飛んだり跳ねたりする場合は、今度はスタンス幅も影響してくるし、前後29インチなのか、マレットなのかでも違ってくるからタチが悪い(笑)結局は、自分で使ってみてしっくりくるかどうかという話になっちゃうのですが、そこをできるだけ見抜くのがショップのお仕事なので、悩んだら一度ご来店ください~~


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