ずっと使い続けられるという意味

駆動系

ディレイラー(変速機)って、なんだかんだ言いつつも、いわゆるスポーツ自転車の花形パーツのようなもの。MTB界では、SHIMANOとSRAMという2大巨頭がディレイラーシェアを牛耳っていますが、それでも毎年、小さな創造的なブランドが、このディレイラーマーケットに参戦してきます。今回ご紹介するMadrone Cyclesもそんな零細ブランド。

ダブルSのメジャーブランドには絶対に存在しない、このカラーリング。MTB黎明期のパープルブームを知っているユーザーにはたまらないでしょ(笑)。これが、MadroneのJABディレイラー。

Madrone Cycles は、もともとは壊れやすいSRAMディレイラーのパンタグラフ部分の強化パーツを製造していたんですが、そのノウハウを活かして、とにかくぶっ壊れないディレイラーを去年リリース。これが、JABディレイラーです。

JABディレイラーのすごいところは、ディレイラーのリンクピボットすべてにベアリングが入っていて、普通のディレイラーのリンクピンの何倍も太い、普通のボルト&ナットを使って組まれているところです。ベアリングは、動きをよくするだけではなく、ピボットに強い衝撃が加わっても、ベアリングを通して衝撃を分散させるため、ディレイラー本体の変形に抵抗する役割があるんですね。

プーリーケージも強度最優先の削り出し。ちょっとわかりにくいですが、ケージの回り止めが、アレンボルトの頭を使うという、これでもかという強度優先ぶり(笑)これらのパーツ類は、すべて補修パーツとして後から購入できます。

さらには、UDHハンガーにはこのような強化マウントもオプションで用意されています。UDHハンガーの固定ボルトをうまくつかって、ディレイラーボルトでもって、フレームをサンドイッチするようにディレイラーを固定。この結果、ディレイラーに大きなインパクトが加わっても、UDHハンガーを通して衝撃をハブ側に逃がし、ハンガーがフレームにめり込むのを防いでくれるんです。

あと、この写真、ケージにアレンキーが差し込まれているんですが、これ、3㎜のアレンキーをストッパーにして、ケージをオープン状態に保てるようにデザインされているんです。SRAMのディレイラーは、プッシュタイプのストッパーがプーリーケージに設けられていますが、JABディレイラーはそこはシンプルに、アレンキーを突っ込んで固定するようになっているんですね。そのほうがシンプルで、部品点数も少ない。でも、機能的という、Madrone Cycles の哲学を表しているようなポイントです。

JABディレイラーの大きな特徴は、1つのディレイラーで、MTBでもグラベルバイクでもロードでも、SHIMANOでもSRAMでも、12速でも11速でも、ぜーんぶ対応しちゃうというところ。

ケーブルルーティングプーリー部分は、角度が調整できるように作られているだけではなく、ちゃんとグラベル&ロード用にはバレルアジャスターがついています。半面、MTB用はアジャスターレス。でも、アジャスターがついていてもMTBにも使えるので、当店では基本的にバレルアジャスターがついているものをMTBにも使っちゃう(笑)。そうすれば、後でそのディレイラーをグラベルバイクに転用するときに、お金をかけてアジャスターを買わなくてすみますからね(大笑)

これは、ケーブル固定部分に取り付けるカム。このカムが何種類も用意されていて、11速でも12速でも、SRAMでもSHIMANOでも、みんな対応できちゃう。もちろん、後から違うものを購入もできるので、用途に応じてディレイラーをアップデートできます。

この強化ハンガーはシクロクロスバイクにもとても有効。担いでいる際に、ディレイラーをどこかにぶつけたりしてもまず安心。UDH仕様でない場合は強化ハンガーは取り付けできませんが、それでもディレイラーそのものの強度は半端なく高いので、乱暴に扱わざるを得ない状況でも安心です。

そもそも、Madrone Cycles との出会いは、去年のSea Otter Classics。偶然見つけたブースで、このディレイラーを見て、あ~!!これ、絶対にいい!!!と、Madrone Cycles のエンジニアとオーナーのアロンに猛チャージ(大笑)

ああ、このころのおいらはデブですねぇ……(そうじゃない)

隣の背の高いアロンですが、彼はドローンのバッテリーを開発していた(アマゾンのデリバリー用ドローン)エンジニアで、自転車は最初は趣味だったとのこと。そんな中、最近のMTBの駆動系がどんどんハイテクになり(ワイヤレスシステムなど)、値段が高くなり(10万円オーバーのディレイラーも珍しくない)、ぶっ壊れた時には修理不能という状況に嫌気がさしてきて、どうにかしてやろうと立ち上がったとのこと。その最初の製品が、前述の、SRAM Eagleの修理用パンタグラフパーツだったというわけです。

アメリカで最近よく言われる言葉に、「Right to Repair」という言葉があります。訳すると、「修理する権利」。いろんな製品が複雑になり、ブラックボックス化されることで、壊れた時にはユニット丸ごと交換がアタリマエになる中、ちゃんと修理できるように製品を作りなさいよ!という社会意識のことです。この言葉は、最近は特に自動車界でよく言われるようになってきて、EV(電気自動車)のバッテリーが故障時にユニット丸ごと交換しないといけないのは間違っている!と訴訟にまで発展しているケースもあります。

そんな背景があって生み出されたJABディレイラーというわけです。奇をてらった、カラフルな削り出しディレイラーというわけじゃないんですよ(笑)

ちなみに、変速性能は、はっきりいって、メジャーブランドのハイエンドモデルとまったく変わりません。お値段は5万6000円からと、そりゃ高額ですが、フレームが変わっても、バイクが変わっても、ずーっと使い続けられると考えれば、ワイヤレスシステムのディレイラーに大金使うより、ずっと賢い選択なのかもしれません(といいつつ、Di2のディレイラーやAXSのディレイラーも使っていますが・苦笑)

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